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2013年4月

2013年4月 6日 (土)

真昼のラーメン無頼

ときどきラーメンを食いたくなる。年に数回程度だ。京都という街は「薄味!」と言うわりにはラーメンの味は日本一濃いんじゃねぇかとオレは思っている。オレは自称ラーメン通と名乗るヤツの味覚は信じちゃいねぇ。あの濃い味付けですっかり壊れちまってるはずだからな。だが、自称ラーメン通にオレはガンマンと同じ匂いを感じているんだ。ラーメン屋の店主がエラそうなヤツなら尚のこと、そこは決闘の場になるはずだ。そんなことはどうでもいいが、システマチックにマニュアル化された最近のラーメン屋に辟易とした日のことを思い出した。


オレの人生を変えたマカロニ映画はこの「怒りの荒野」だ。20代の半ばにテレビの深夜枠で放映されていたのを録画して何度も見返していた。
街の掃除人で周囲からは蔑まれていた娼婦の私生児スコットの前に、凄腕のガンマン タルビーが現れる。一流のガンマンを夢見ていたスコットはタルビーに弟子入りを志願する。そこで世にも有名な「ガンマンの心得10箇条」が火を噴く。それはそのままオレの人生十戒にもなっている。

街で映画を1〜2本観るためにセガレを保育所に預けた日の話だ。用の合間に入ったのがラーメン屋だ。今思えばラーメンより餃子を食うのが目的だったのかもしれねぇ。

「ご注文お決まりでしょうか?」

“ラーメン食い”にゃ礼儀はいらねぇよ、ネエちゃん。
「ラーメンと焼き餃子。あと瓶ビールください」
ビールは生ジョッキより瓶に限る。って言ったってどっちも生ビールだ。だが、中身も値段も一緒のわりに生は量が少ねぇ。中ジョッキの定義も曖昧だ。店が薄汚く店主が不潔そうだったら生はやめといた方がいいだろう。おそらくサーバーの洗浄はやってねえからな。

「申し訳ありません。ビールは生のグラスか中ジョッキだけになりますが」

ナニ!あくまでも儲けようっていうセコい魂胆だな。しょうがねぇ、背に腹はかえられねぇからなぁ。
「じゃ、中ジョッキで」
チェーン店らしく店は小ぎれいだ。衛生面は問題ねぇだろう。今どきネットで火を噴きゃ皆殺しだからな。

「餃子は一人前でよろしいですか?」

もちろんだ。
「はい」

「かしこまりました。ラーメンの麺は固めか柔らかめに出来ますがどうされますか?」

まだ居たのか!“固め”ったって基準がわからねぇからな。“普通”ってのがこの店のベストなんだろう。
「じゃあ普通で」

「かしこまりました。ネギとモヤシの量はどうされますか?」

おいおいこの店の黄金比率ってのは無ぇのかい? 自慢の一杯を出してくれりゃあそれでいいんだ。
「普通で。全部普通で」
早く帰ってオレの注文を伝えろ!

「生ビールは他のメニューと一緒にお持ちしてもよろしいでしょうか?」

用意できた順番でかまわねぇんだよ。オレはコース料理を食いに来たんじゃねぇんだ。ガンマンの心得その8:相手に必要以上の弾を与えるな。与える言葉も最小限でいいだろ。
「はい」
もう何も聞いてくるな!

「ご注文は以上でよろしいですか」

「はい」
今すぐ帰れ!

「ご注文繰り返させていただきますラーメン麺の硬さ普通ネギモヤシ普通焼き餃子生ビール中ジョッキ以上で・・・」

「はい」
・・・。

「では少々お待ちください」

もうずいぶん待ったぞ。しかしこれが接客って言えるのかい?まったく人間と喋った気がしねぇ。

「お待たせしました。生ビールと焼き餃子です。ラーメンもすぐに出来上がりますので少々お待ちください」

そっちの順番は確認されてねぇぞ! なんだかよく分からねぇな。しかし思ったより早ぇじゃねぇか。餃子のたれ作っておくのを忘れてたぜ。酢を多め、醤油は少なめ、ラー油は無しだ。タネに下味が付いているし、油分もかなりありそうだからな。ラー油は不味さを隠してくれるが、モノが美味けりゃ邪魔な存在だ。1人前で餃子が6発か。ガンマンの心得その4:拳も弾と同じで、最初の1発が肝心だ。美味いものを食ったときの感動はどこに集約されているか?それは一口目だ。餃子なら1発目だ。それを口の中に撃ち込む。絶対に半分に噛みちぎっちゃいけねぇ。丸ごと撃ち込んで、まずは皮の風味を味わうのさ。熱っ!ハフハフ・・・。まだ噛んじゃいけねぇ。ガンマンの心得その6:危険なときほどよく狙え。落ち着け。そして味わえ。うん、使い回した古い揚げ油の雑味が旨味を引き立てている。これぞB級グルメの真髄だ。

「お待たせしました、ご注文のラーメンです」

おっと、このタイミングか。遊びは終わりだな。せっかくの普通麺が柔らか麺になっちまう。しょうがねぇ、一気に噛むとするか。この皮を破ればまた新たな荒野が待ってるだろうからな。ガンマンの心得その10:皆殺しにするまでやめるな

「ご注文のメニューは全て揃いましたでしょうか?」

ん!んググ、ゴックン・・あ!
「は、はい」
・・・。

「では、ごゆっくりお召し上がりください」

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