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2017年4月25日 (火)

二人の怒れる男(笑)

10日ほど前の仕事帰り、阪急河原町駅に着くと、構内は人でごった返していた。人身事故による運行停止中に出くわすのは今年に入って2度目だ。前回は事故から時間が経っていたらしく、20分ほど待ったら再開したけど、今回は事故が発生したばかりで運行再開の目処は40分ほど後だという。改札近くでそのアナウンスを聞いていると、いきなり70歳くらいの男性が駅員に詰め寄って「ナニしとんねん、早よ改札通せや!」と怒鳴りだした。駅員が「申し訳ございません。警察による事故処理が終わるまで、もうしばらくお待ちください」と言うと、その男性は「いつまで待たせんねん、ほんまエエかげんやなぁ!」とブツクサ言いながら離れていった。半年ほど前にも事故後の混雑に出くわしたときに、似た光景を見たばかりだ。やはり70歳くらいの男性が駅員を怒鳴りつけていた。彼らは酔っぱらいでもガラの悪い輩(やから)でもなく、呆けてる風でもない、どちらもどこから見ても身なりの良い賢そうな老紳士だった。まるでその世代がキレやすいとか傲慢だとかのような恣意的な書き方と思われるかもしれないけど、いわゆる“その世代”というのは分母が大きいだけに、いろんなタイプそれぞれの分子も大きくなるため、もちろん穏健で常識的な人も相対的に多いのだと思いたい。
先週の月曜日、当初は私にとって何かと都合の悪い京都シネマでしか上映していなかった『わたしは、ダニエル・ブレイク』が、MOVIXに引っ越し上映となり、めでたく観ることができた。
59歳になるまで実直に大工を続けてきたダニエルは心臓を患い、医者から仕事を止められ福祉支援を受けていたが、役所から委託された民間業社の審査員による継続審査で就労“可”の結果が出され支援が停止となることに。役所のアドバイスで求職者支援を受けるため、履歴書の書き方講座を受講し、手書きの履歴書を持って建設現場などを歩き回るダニエル。しかし、ネットを使った求職活動のように、活動の証拠(履歴)がなければ「やっていない」と見做され支援が受けられず罰則対象にもなるという。そもそもダニエルは病気で仕事ができない。
50年もの間、下層階級に焦点を当てた作品を撮り続け、自ら左派を自称するケン・ローチ監督の、おそらく最後となる作品であろう本作を観て、けっきょくのところ、みぎひだり関係なく、社会思想なるものの行き着くところは「人間としての尊厳を捨ててしまってはいけない。奪うまではしてはいけない」ということではないだろうかと私は思う。相反する思想でありながらケン・ローチとクリント・イーストウッドは、ある意味同じだ。

引っ越して来たばかりで道に迷い、約束の時間に遅れて役所にやって来たシングルマザーは、遅刻の罰則として支給がひと月止められ、その後も減額されるという。いくら懇願しても聞き入れられず追い返されそうになっている一部始終を見ていたダニエルはたまりかねて立ち上がり「助けを求めているのに、なぜ聞いてやらない」と大声で職員に訴える。このときにふと駅員を怒鳴りつける裕福そうなオヤジたちを思い出したのだった。
どんな事情かは知らないけど、走る電車に飛び込むまで追いつめられた人に想像力を働かせてみれば、足止めを食らったイライラも少しは静まるのではないだろうか。

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